静電気帯電防止作業服を着用する効果とは?
火災や爆発の危険を防ぐため
摩擦によって物質同士がこすれ合うと、物質間で電子の移動が起こります。このとき、電子を放出した側がプラスに帯電し、電子を受け取った側がマイナスに帯電します。このようにプラスとマイナスの帯電状態にある物体同士が接触・近接すると、静電気が放電されます。
静電気は、放電すると非常に高い電圧と電流が瞬時に発生するため、火花が散ることがあり、それが原因で火災や爆発が発生することがあります。
静電気帯電防止作業服は、こうした静電気の蓄積を防ぎ、放電を制御することで火災や爆発のリスクを低減する効果があります。
機械や電子機器の部品の損傷を防ぐため
現場で作業をしていると、作業服や安全靴などが摩擦によって静電気を帯びることがあります。塵や埃が多い場所では静電気が発生しやすく、機械と接触することで静電気が放出され、機械内部の電子機器や精密部品に損傷を与える可能性があります。また、磁気媒体に影響を与え、データの破損や消失の原因になるケースも少なくありません。
静電気帯電防止作業服であれば、突発的な静電気の放電を抑制できるため、こうしたリスクを抑えることができます。特に電子機器工場や半導体の製造現場では、静電気による損傷は製品の品質や生産性に直接影響するため、着用が必要となります。
静電気帯電防止作業服には、JIS規格である「JIS T 8118」と、IEC規格の2種類が存在します。現場の特性や製品の用途、さらには海外輸出の有無によって求められる基準が異なるため、どちらの規格が必要かを判断するためにも、まずはそれぞれの特徴を理解しておくことが重要です。
帯電防止作業服の規格「JIS T 8118」とは
「JIS T 8118」とは、日本産業規格“JIS”によって標準化された「静電気帯電防止作業服」の規格のことです。通常の作業服とは異なり、導電性の繊維が入っているため、電荷量が少なく静電気が発生しにくい特徴があります。
ガソリンスタンドや工場をはじめとした現場では、静電気の帯電によって火災や爆発事故が発生する危険があるため、“帯電防止織物”を使用した作業着の着用が求められています。
静電気帯電防止服の着用などを通して、労働者の安全を守らなければならないことについては、下記の通り労働安全衛生規則によっても規定されています。
労働安全衛生規則 第二百八十六条の二 (静電気帯電防止作業服等)
“労働者に静電気帯電防止作業服及び静電気帯電防止用作業靴を着用させる等労働者の身体、作業服等に帯電する静電気を除去するための措置を講じなければならない。 ”
この規定を守らないことによる罰則はありませんが、事故が発生した際に着用していないことが発覚すると大きな問題となるため、静電気帯電防止服を着用するなどして労働者の安全を守ることが求められます。
そうした事故の危険を減らすためには、静電気帯電防止作業服の中でもより静電気の発生しにくい「JIS T 8118対応」の製品を選ぶことが重要です。
JIS T 8118の規定
前述の通り、「JIS T 8118」は日本産業規格“JIS”によって規定されています。
通常の静電気帯電防止作業服とは様々な点が異なりますが、主に下記のような特徴があります。
1.生地は帯電防止織編物を使用すること
裏地なし帯電防止服の生地は、すべて帯電防止織編物でなければなりません。
やむを得ず補強裏地・ポケット裏地などに帯電防止織編物でない生地を使用する場合、その面積が帯電防止服の表面または裏面露出面積それぞれの20%を超えないものとする必要があります。
2.裏地生地(ボア)などは使用しないこと
裏地付き帯電防止服(中綿入りの防寒服やジャンパーなど)の生地は、表地及び裏地についても帯電防止織編物を使用し、原則として裏地生地(ボア)などは使用してはいけません。
やむを得ず、襟袖口などに帯電防止織編物でない生地を使用する場合はその面積が帯電防止服の表面または裏面露出面積それぞれの20%を超えないものとする必要があります。
3.金属製ボタン・ファスナーなどは使用しないこと
金属製ボタン・ファスナーなどの金属製付属品は使用してはいけません。
やむを得ずこれを使用する場合は、着用状態(ボタン・ファスナーなどを付けた状態)において直接外側に露出しない構造にする必要があります。
一点あたりの帯電電荷量が0.6μC以下であること
以上の3つの構造・材料に関する規定に従い、かつ一点あたりの帯電電荷量が0.6μC以下になっているものでなければなりません。
JIS T 8118適合製品の着用が必要な現場
静電気に起因する事故の危険がある作業現場では、以下の理由からJIS T 8118帯電防止服の着用が求められます。ただし、現場によって着用要件は異なるケースがあるため、現場ごとに安全規定を確認し、その内容に沿った対応をとることが必要です。
ガソリンスタンドや化学工場
ガソリンや可燃性ガスなど、引火性の高い物質を扱うガソリンスタンド・化学工場では、静電気の放電が引き金となって可燃性ガスや蒸気に引火する危険があります。引火によって火災や爆発などの事故が発生するリスクが高いために着用することが求められます。
食品・製薬工場
食品工場や製薬工場では、粉塵のような微粒子が生じやすく、特に粉体を扱う工程では静電気による粉塵爆発のリスクがあります。こうした粉塵爆発のリスクを最小化するために着用することが求められます。
電子部品工場
精密な電子部品を取り扱う電子部品工場や半導体製造工場では、静電気の放電により精密電子部品が損傷したり、微細な電子回路やセンサーの誤動作が発生したりする恐れがあります。
JIS T 8118帯電防止服を着用することでこうしたリスクを抑え、製品の品質と信頼性を確保し、不良品の発生を抑制することが可能です。
印刷工場
印刷工場では、印刷機の稼働に伴い材料やインクが帯電し、静電気が発生することで紙の付着や紙送りの不良、インクの飛散や付着ムラなどが発生することがあります。また、可燃性溶剤を使用する場合、静電気の放電により引火し、火災が発生する危険もあるため着用することが求められます。
電力会社や発電所
高電圧機器を取り扱う現場では作業中に帯電する可能性があり、静電気の放電に起因して火災や感電といった事故が発生するリスクがあります。こうした事故を防ぎ、作業員の安全確保と電力の安定供給を維持するため着用することが求められます。
建設現場
建設現場の中でも揮発性物質を使用する現場や、掘削によって粉塵が多く発生する現場では、爆発や火災の危険性があるため着用することが求められます。
需要が拡大しつつあるIEC適合の帯電防止作業服とは
近年、帯電防止作業服の中でも「IEC(国際電気標準会議)規格対応」の製品が注目されています。IECはJISよりも厳格かつ世界的に一般化された防爆・静電気対策規格であり、製造ラインや組み立てラインなど、ラインごとに求められる安全基準が異なる点が大きな特徴です。特に海外輸出を行うメーカーでは、IEC規格や国連(UN)規定をクリアしていないと輸出ができないケースもあるため、グローバル基準での静電気対策ユニフォームが必須となりつつあります。
製品の高度化・微細化が進む電子機器や精密部品の製造現場では、ほんのわずかな静電気でも破損・不良・誤作動を引き起こす可能性が高まっています。このため、より高い静電気管理レベルを求められる現場で、IEC適合の帯電防止作業服の導入が急速に広がっています。
IEC適合の帯電防止作業服は、クリーンルームで着用される防塵服とは異なり、ライン上の機器や製品に静電気が影響を及ぼす可能性のある現場を中心に着用される作業服です。電子部品や精密装置の組み立て工程など、静電気リスクの管理が求められる現場で多く採用されています。
IECの主な規格
IECのユニフォームに関連する代表的な規格としては、以下の2つが挙げられます。
1.IEC 61340-5-1(電子機器のESD破壊を防ぐ規格)
電子デバイスや基板などが静電気で破壊されるのを防止するためのESD管理基準で、表面抵抗値は 1×10¹¹ Ω(オーム)以下が求められます。
2.IEC/TS 60079-32-1(静電気放電による可燃物への着火を防ぐ規格)
ガス、粉じん、蒸気など可燃性物質が存在するエリアでの“静電気由来の着火”を防ぐための技術仕様です。ユニフォームに求められる基準としては、表面抵抗値 2.5×10⁹ Ω(オーム)以下が目安となります。
IEC適合の帯電防止作業服の着用が求められる主な現場
以下のように、静電気による製品損傷・爆発・誤作動などのリスクがある現場では、IEC適合の帯電防止作業服の着用が推奨されています。
電子・半導体・精密機器分野
・弱電・半導体工場
・電子機器組み立てライン
・精密機器製造
医薬・化学・粉体処理分野
・製薬工場
・化学工場
・食品製造工場(粉体工程など)
物流・輸送・倉庫分野
・輸送・物流現場
・ロジスティックセンター
清掃・メンテナンス分野
・クリーンクルー(施設清掃・メンテナンス)
・ビルメンテナンス
こうした業界では、JISだけでなくIEC対応の帯電防止作業服の導入も検討することで、火災・爆発事故のリスクを大幅に下げられるほか、精密機器や電子部品の損傷防止にもつながり、製品品質の安定化や生産性向上に寄与します。
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